珠樹自然農園の野菜に対する考え方
私達の農業は、自然農薬(植物などから抽出した成分)や有機物(稲わらや鶏ふんなど)を利用して、農業を行っています。口の悪い人には、「戦前の農業みたいで、昔かえりだね!」と言われたことがあります。
また、「農薬を使わないと害虫の巣になって、隣の田畑に迷惑が掛かるじゃないの?」と言う人もいます。挙句の果てには、「虫に食われた野菜は、生き物に有害な成分を体内に発生させるから農薬より危険だ!」と・・・
私達は、これらの意見に対し、真っ向から否定したり、反発したりしません。なぜならば、どのような過程を経て作られた野菜でも、最終的には消費者の方々が選択するのであって、慣行栽培・エコ栽培・有機栽培・・・色々な作り方が共存すれば良いのではないでしょうか。しかし、私達は、農薬と化学肥料を使用しない野菜づくりを行っていきます。そこには様々なこだわりがあるからです。
「農業は、環境破壊の一因である。」という話を何かの本で読んだことがあります。確かに、自然界に暮らす生き物達にとって濃度が基準値以上の農薬の散布は脅威そのものでしょう。また、必要以上の化学肥料の使用が地下水の汚染問題を各地で起こしています。最近では、輸入された野菜や食品から日本では使用が禁止されている農薬が検出されたり、基準値を上回る残留農薬によって輸入が禁止されたりという事件が頻繁に起こっています。
これらの問題は、悪意によってのみ、引き起こされたことであるとは思えません。「何か必要に迫られて、無理をしている結果なのではないかという考えが浮かんでなりません。
我が国の野菜は、大きさと見た目や重さが全て揃っており、農薬の使用回数や残留農薬が基準値以下であるという「規格」で厳しくしばられています。食べ物というより、「商品」として完璧なレベルの物を求められています。害虫は全滅するまで徹底的に防除し、害のない生物をも排除してきました。その結果、規格外の野菜は、収穫もされずに、ちょっとの曲がりや長短で畑に捨てられてきました。昔は、どこにでも見られたメダカが絶滅危惧種に指定されています。田んぼのイナゴが珍しがられ、害虫や病気が農薬に対して抵抗性を持つという「人間が頂点の自然生態系」が形成されつつあります。
私達は、人間の欲求のままに、生態系に負荷をかけながら農業を行うということに賛成することができません。「人間は自然界の中で生きさせてもらっている」という言葉を聞いたことがあります。ここまで謙虚な気持ちを持つことは難しいですが、私達は、畑と田んぼに出来る限りの配慮をし、害虫に対する天敵(益虫)や土を耕してくれるミミズがたくさん住みつき、また、様々な菌が共生することで、野菜の病気が発生しにくいような「多様性に富んだ耕地生態系」を目指しています。
「環境保全型農業」
私達は、「環境保全型農業」と「資源循環型農業」という2つのこだわりを持って農業を行っています。
「環境保全型農業」については、私達の田んぼを例にとってみましょう。私達の田んぼは千葉県旭市にあり、昔から「干潟八万石」と呼ばれている米どころにあります。その地域の中でも、味の良い米がとれると評判の清水の湧く谷津に位置しています。 私達は、自分の田んぼを「ジャングルみたいだ!」と思います。除草剤を使わずに手で除草を行うのですぐに草が生えます。さらに、カエルやクモ、ミミズ、ヤゴ、イナゴ等がいたる所にいます。
しかし、稲の害虫であるカメムシやガの幼虫が大量発生するということはありません。一枚の田んぼは、それぞれ独立した生態系であり、様々な生き物が共生することで、天敵が害虫の大量発生を抑制してくれます。私達は、生物の多様性を保つことで、農薬や殺虫剤・殺菌剤を使うことなく、お米を生産しています。ですから、前述した「害虫の巣」ではなく、むしろ他の田畑から逃げ出した生物が、私達の田畑に住み着くような環境になっています。除草剤を使用していないので、春先には野ぜりやよもぎ、つくしが田んぼの畦や湧水の水辺にどんどん生えてきます。また、田んぼは、主食である米を産出するだけでなく、景観の保全や治水、また、気温を下げるという効果もあります。
今後も、私達は、昔からそこにいる生き物と共存し、常に周辺の環境へ配慮した農業を行っていきます。
「資源循環型農業」
「資源循環型農業」とはどのようなものでしょうか?私達は米を作っているので、肥料の素となる稲わらや籾がら、米ぬかがあります。また、鶏を飼っていますので、鶏ふんがあります。これらの材料を混ぜて発酵・熟成させた堆肥(ぼかし)を肥料として利用しています。また、野菜のくずや下葉は、鶏の餌になります。
このように外部からの投入物を極力減らし、自分達の管理のもとで生み出される廃棄物を再び資源として循環させてあげることは、人にも物にも環境にも優しい農業であると考えています。
農薬と化学肥料を使わない私達の農業は、これらを使うことが出来なかった時代・・・それはどうにかして生産量を増やそうという時代に「昔かえり」することとは違います。私達は、作り手と買い手が目に見える範囲で納得して売買することの出来る野菜、小さい子供達や妊婦の方が安心して食べることの出来る野菜、調理される方が楽しめる野菜、欲ばりなようですが、安全安心ということは当然で、さらに味が良く、野菜を買う楽しみまでをも提供したいのです。